それじゃ、その理由と一緒に防火性能を調べる実験もしておるから一緒に見てみるかのぉ。
目次
住宅火災の怖さ
一般住宅で毎年多くの火災が発生しております。
2019年では、建物火災は20,915件発生。(※総務省消防庁発表)
これは1日あたり57件発生していることになります。
原因は、調理器具や暖房器具、タバコ、電気機器や配線器具を束ねた延長コードからの発火など原因はさまざまです。
そして、日本は地震大国。
地震から火災につながるケースもよくあります。
住宅火災は決して人ごとではありません。
大切な家族の命を守り、資産である家を守るため、これから家を建てたいとお考えの方は、ぜひ防火についても一緒にお考えください。
防火性能のある断熱材の選び方
□燃えにくいか
□燃えにくくても溶けてしまったり、高温になり柱や梁が燃えないか
□有害なガスが出ないか
これらの要素がクリアできる断熱材を選びましょう。
なぜセルロースファイバーは防火性能が高いの?
断熱材 セルロースファイバーは防火性能が高く「燃えにくい」「溶けない」「全体が高温にならない」「有毒ガスが発生しない」という防火に必要な性能が揃っています。
その理由はセルロースファイバーには、 約22%ものホウ素系薬剤が均一に配合されているからです。
ホウ素系薬剤と聞くと何かの薬剤かと不安に思う方もいるかもしれませんが、皆さんご存知のホウ酸のことです。
ホウ酸は海水・淡水・植物(食物)・土など様々なところに存在する天然資源です。
普段から私たちの肌に触れ・食しており、安全性が高い成分です。
そして、ホウ酸には難燃性という特徴があり、火がついても表面が炭化し炎を遮断します。
セルロースファイバーはホウ酸の効果で自己消化性を持つため、火が燃え広がるのを防ぐ力があります。
加えてセルロースファイバーは密度が高いため酸素が入りにくく火が燃え広がることを防ぎ、万が一の火災でも逃げる時間を稼ぐことができます。
(グラスウールの密度が16Kに対してセルロースファイバーは3倍の55Kもあります。(K=kg/㎥:密度を表す))
そして、原料が木質系断熱材とホウ酸のため、燃えた時も有害なガスがでないため安心です。
これはセルロースファイバーの防火性能を知るための実験映像です。
木枠に規定密度(55kg)を入れて、ガスバーナー(800〜1000℃)で燃やしました。
結果、表面が黒く炭化しますが中まで燃えていないことがわかります。
「セルロースファイバー」の燃えない秘密は「ホウ酸」と「密度」にあったのね。
普段からみんなも食品や飲み物から摂取しておるんじゃよ。身近では目薬やゴキブリ団子などにも使われておるぞ。
ホウ酸を木にしみこませたものは防火効果があります。
◎セルロースファイバーはホウ酸配合と高密度と自然素材のため高い防火性能があります。
セルロースファイバーとグラスウールの防火性能比較
種別 | 時間 | 要件 |
不燃材料 | 20分間 |
|
準不燃材料 | 10分間 |
|
難燃材料 | 5分間 |
断熱材 | 認定 | 内容 |
グラスウール | 不燃材料 | 20分間上記の防火の性能があると認定 |
セルロースファイバー | 難燃材料 3級 | 5分間上記の防火の性能があると認定 |
上の表からだと、20分間も火に耐えることができるグラスウールの方が防火効果が高いんじゃないのかな?
それじゃ、実際はどうかを調べる比較実験をしたから見てみるぞ。
防火性能比較実験
①下記の表の断熱材を各々木枠に入れてしっかりとめます。
※下記の厚み・密度は、一般住宅で使用される仕様です。
断熱材 | 厚み | 密度(kg/㎥) |
左:グラスウール | 100mm | 16K |
右:セルロースファイバー | 100mm | 55K〜60K |
②直径100mmの穴を開けた石膏ボードを貼り、ガスバーナーで5分間燃焼します。(800℃〜1000℃)
5分後↓
左:グラスウール / 右:セルロースファイバー
③各々同じ距離・同じ火力で5分間燃焼。石膏ボードを外します。
結果、グラスウールは完全に溶け内部まで燃焼しました。
グラスウールは不燃材とされていますが、バインダー(繊維の接着剤)は150℃で溶け始めます。
そして、250℃〜350℃でグラスウールの繊維が溶け始め、800℃で燃えます。
セルロースファイバーは先ほど解説にあったように穴のあいた部分だけ黒く炭化し、その周囲まで火がまわりませんでした。
これは、
・セルロースファイバーのホウ酸が難燃効果を発揮したことと。
・セルロースファイバーの密度が高い為、酸素が供給されにくく燃え広がりにくくしていること
が防火効果を高めている理由です。
また、煙の量はグラスウールよりセルロースファイバーの方が少なかったです。
下の写真で柱まで火が回りこんでいないのが分かりますね。
※断熱材を外した木枠の様子。
※貼ってあった石膏ボード
左:グラスウール / 右:セルロースファイバー
破損の状態をみると両者の違いは歴然ですね。
こうやって実験結果をみると不燃材としてグラスウールが20分間も耐えられる防火性能があるかはちょっと疑問が残るなぁ。
火災の時は、1000℃〜1200℃になるため800℃で燃えるグラスウールが必ずしも安心とは言い切れんのぉ。
また実験結果から、セルロースファイバーがグラスウールより防火性能が高いことはわかってもらえたかな。
羊毛混合断熱材とポリエチレン断熱材の防火実験
断熱材の中ではウレタンフォームや羊毛混合断熱材やポリエチレン断熱材は残念ながら防火性能は、それほど高くありません。
また、ウレタンフォームは燃えると有毒ガスである青酸ガスを発生します。
青酸ガスとは窒素・炭素・シアン化水素を含む気体です。
シアン化水素は殺虫剤のほか、化学兵器にまで使用されるほど人や動物にとって致死性の高いおそろしい毒物です。
10mほどの大きさのウレタンフォームが燃えた際、近くにいた人間はガスを吸い込むと意識が喪失し、死に至ることがあります。
防火性能を考えた際の断熱材としてはあまりおすすめできんのぉ。
それじゃ、次は羊毛混合断熱材とポリエチレン断熱材の防火実験をみてみよう。
羊毛混合断熱材
羊毛混合断熱材を木枠につめてガスバーナー(700~1,000℃)で燃やしました。
ポリエステルなどが配合されているため燃焼しやすくなっています。
火をつけたそばから素材がとけるように燃え、バーナーを外しても燃え続けています。
ポリエチレン断熱材
ウレタンフォーム断熱材を木枠の中にはめ込みガスバーナー(700~1,000℃)で燃やしました。
ウレタンフォームの成分に着火すると、数秒の内に火がつき燃え広がりました。
防火性能の弱い断熱材は着火後、すぐに燃え広がり、なかなか消えないんじゃ。
セルロースファイバー防火性能まとめ
住宅火災は断熱材によっては一瞬で家中に火がまわり有毒ガスを発生させます。
防火性能の高い断熱材を選んでいただき少しでも燃え広がりを抑えることができれば、ご家族の安全・家の全焼を防ぐことができます。
断熱材の選ぶときは防火性能についても一緒にご確認ください。
◎住宅火災は2020年 1日あたり57件起こっています。
震災により火災が発生する可能性はさらに高いです。
◎断熱材によって防火性能に違いがあります。
〈強い〉
セルロースファイバー
ロックウール
グラスウール
〈弱い〉
羊毛混合断熱材
ポリエチレン断熱材
ウレタンフォーム
◎防火性能の高い断熱材を選ぶことにより大切な家族と家を守ることができます。